第2回「医療デザインコミュニティ」報告

2017年6月18日 第2回「医療デザインコミュニティ」(座談会)を開催いたしました。

場所:恵比寿

出席者:北城雅照医師・ZESDAスタッフ8名 (文責:長野英治)

今回は「セカンドオピニオン」をテーマにそれぞれの経験談など色々お話ししていただきました。

また、北城医師による的確なアドバイスにより、セカンドオピニオンについて医療側の見解を知ることができる大変貴重な会となりました。

以下、フリートークのまとめとなります。

1.セカンドオピニオンの定義

セカンドオピニオンとは、ファーストオピニオン(最初に診断を受けた医師)に別の医師(セカンドオピニオン)に受けた診断の結果をフィードバックすることをいう。

医者をチェンジする、即ち転医するとセカンドオピニオンではない。

2.医師側からみたセカンドオピニオンの課題

セカンドオピニオンとして、外来で来院したとも、意見を述べるだけで、(自分だとより良い治療ができると思った場合でも)何も治療はできない。

紹介状を書くことに対しては、気にならないが、セカンドオピニオンで返す時に、言いにくい場合もある。

コーディネーターが必要という印象あり。送る人が必要。ソーシャルワーカーがコーディネーターの役割を担うべきだか、現時点ではその調整能力は弱い。

3.患者側からみたセカンドオピニオンの課題

セカンドオピニオンでは健康保険がつかえず、自費。データを集めて、セカンドオピニオンの医師にデータを渡すために、二万円位かかるケースもある。

4.セカンドオピニオンサービス普及の方策

セカンドオピニオンを提供するサービスは日本国内にも存在するが、単独で加入する場合、年間12万円ほどかかる。

http://www.t-pec.co.jp/service/dd.html

但し、大手の民間健康保険の場合、セカンドオピニオンサービスを追加費用無しに利用可能なサービスとして付帯している場合があり、自身が加入する民間健康保険が提供するサービスについては、確認すべき。

セカンドオピニオンサービスは現状でも使用可能であることを、保険会社が売りにして、啓蒙させていくべきではないか。



5.医師の技量による費用体系について

日本は、良質な医療を均一に提供することを目的としている。そのため、診療報酬が医師によらず同一であり、高くてもいいから、名医にみてもらいたいというようなことは難しい。

一方患者側には、高くてもいいから上手い先生に診てもらいたいというニーズがある。

このニーズを噛み砕くと、患者自身の疾患について治療経験豊富な医師に診て欲しいということである。

同一の疾患を有する患者がどのような治療を受け、どのような経過を辿ったがわかるPatient like me

のようなサイトが日本でも利用可能になること、あるいは、AIの活用により同一疾患の患者データを元に、どの医師でも一定水準以上の質が高い医療を提供できるようにして欲しい。

質が高い医療を受けていないのではと思うシーンとしては、長期間治療していて、医療機関を変えた場合でも、薬が変わる訳でなく、薬が増えただけだった時ににそう感じることが多々ある。

高くてもいいから良い医師に診て欲しいというニーズ、即ち医師の技量による費用体系については、AIによる診療技術向上により、そもそも実施が不要となりえるかもしれない。

6.次回の主題について

より質が高い医療を均一に提供するには、AIの活用が必要ではないかということで、「AIと医療」が次回の主題となった。


〜作成者の感想〜

セカンドオピニオンが主題となった、理由の一つとして、もっといい医療が受けられたのではという、

漠然とした不安や不満の解消になるかもとの思いからでした。

私自身は、医療費抑制のためには、最低限の医療と、自由診療の二極化になるのではと考えておりました。

しかしながら、議論を進めるうちに、ビッグデータを活用したAIによる診断や診療がミスの少ない、より良質な医療をより低コストに展開できる可能性もあるではと感じました。

次回のテーマが「AIと医療」ですので、この答えが見つかればと思います。

医療システムデザイン勉強会「第1回座談会」報告

以前よりお知らせしております「医療システムデザイン勉強会」は「NPO法人 ZESDA」の一つのプロジェクトとして運営していきます。運営はZESDAのスタッフが中心となりますが、当勉強会のFBページにご参加いただいているメンバー、医療に興味のある方、医療分野でビジネスを興したい方など、ZESDAスタッフ以外の方でもご一緒に運営に関わっていただける方を随時募集しております。是非お気軽にご連絡ください!(応募サイトは近日中にオープン予定です)

さて、新生「医療システムデザイン勉強会」の企画として、2017年5月21日(日)に第1回座談会を開催いたしました。当初より特にテーマは決めず、参加された方とフリーディスカッションをする予定でした。

参加者は今回より医療システムデザイン勉強会専任のスタッフとして加入した長野(製薬会社勤務 第一種放射線取扱主任者 免許 宅建主任者 免許MBA慶應義塾大学経営管理研究科))、ZESEAニューヨーク支部長の堀永(起業家、薬剤師)、ZESDA理事の清水(管理栄養士:リハビリ病院約10年勤務)、勉強会のグループに最近入られた多田さんの合計4名でした。
まずは自己紹介から、どんな思いで今回参加したのかなど…それぞれ順番に話しながらゆるくスタートしました。


参加者の多田さんは税理士としてご自身で会社を経営されているとのことでしたが、医療系のビジネスにも興味があるとのことで今回参加されました。
多田さんになぜ医療に興味を持ったか?という事をお伺いすると、ご自身のご家族が病気のため入院したことがきっかけで、病院や医療のシステムに疑問や怒りを持つようになった。とのことでした。

ご家族が入院されしばらく経ったある日、いきなり医師より「出ていけ」と言われたとのこと。何の説明もなく、いきなり言われどうしていいかわからず、いったい医療は誰のためにあるのか?なぜ、自分はこんなに辛い思いをしなければいけないのか?と多田さんはご自身の経験を怒りを込めてお話しされました。

他にも「同じ治療をしているのに、病院によって値段が違うのはなぜか?」という問いに、医療側の意見としては「診療報酬により医療費は決まっているので、その明細を病院に見せて、なぜ料金が違うのか?と聞けばいいのでは?」と助言すると、「一般人からはなかなかそこまでは聞きにくい」とのことでした。

本当に聞きたいことをなかなか聞けない、聞きづらい雰囲気は医療の世界にはあると思います。医師からの説明不足、医療費に対する不振感など、このような問題は日常的に多々あるかと思います。医療を受ける側へ、医療を提供する側の説明不足のために起こるトラブルは多いのではないかと思います。

医療に限らずコミュニケーションは重要です。患者側が病院に対して質問があれば、受付や会計窓口などで聞くことは可能です。むしろ医療側は説明の義務があるので、気になることはどんどん聞いていただきたいと思います。
相手が納得するまで説明することは(特に医療のシステムに関しては)忍耐力や時間を要することもありますが、それでも説明すれば解決するような問題も多いのではないかと思います。

医療のシステムは一般の方からすると理解に苦しむ事があるかと思います。
実際、医療側でもなぜこの治療にこの点数?(診療報酬)ということもあります。この診療報酬制度自体がそもそも曲者なので、一般の方には理解できないことが多いのではないでしょうか。それでも医療側は国が決めたルールならば、理不尽と思いつつも従わなければいけませんし、きちんと説明をしなければいけません。


多田さんは「今日はこんな話をするつもりはなかった…」と仰っていましたが、今回の座談会は医療を受ける側に立って考える大切さを改めて感じる事ができ、とても有意義な会だったと思います。今回のような貴重なご意見は医療者だけの集まりではなかなか出にくいものです。

このように今後も座談会を通して医療者に限らず、医療に対する不信感や質問など、医療を受ける側の方からも自由にお話いただき、問題解決のためのアイデアを医療関係者やビジネスを興したい方に繋げられるような活動をしていけたらと思っております。

座談会の名称を「医療デザインコミュニティ」とし、次回の第2回では「セカンドオピニオン〜暗黙の了解を打ち破れ!〜」をテーマに開催予定です!!
実際にセカンドオピニオンを依頼(診察)される医師の方、セカンドオピニオンを受けた側の経験談をお話しされたい方など、ご意見、ご興味ある方は是非お気軽にご参加いただきたいと思います!(医療関係者以外の方のご参加もOKです!但し、必ず参加した方には何かしらお話しいただく予定です。)

日程は後日、医療システムデザイン勉強会、FBページにてお知らせ予定です!是非皆様、ご参加ください!
https://www.facebook.com/groups/134620810050191/?ref=bookmarks

みなさま
医療システムデザイン勉強会を主宰して参りました桜庭と申します。

2008年の発足以来、あらゆる医療関係者(医師、薬剤師、厚労省職員、看護師、介護士、シンクタンカー、自治体職員、医学生、医療機器メーカー、弁護士、製薬会社、政治家、患者会関係者、栄養士、新聞記者、プログラマーアプリ開発者等)が、対等な立場で自由闊達に議論する場、業界の構造を俯瞰できる場をご提供して参りました。

そしてアイディアや提案の一部は、行政・政治関係の参加者によって、実際に各種提案に盛り込まれるなど、アドボカシー活動も担って参りました。

しかし、2014年7月より私が留学しておりますこともあって、医療システムデザイン勉強会主催の勉強会は、ほぼストップしておりました。

このたび、私が2016年8月に帰国いたしますことを機に再起動して参りたいと存じます。そして、この際、より一層、企画力を増進し運営実務の効率性を向上させるべく、私が代表を務め当会の幹事メンバーの大多数が所属するNPO法人ZESDA(日本経済システムデザイン研究会 http://zesda.jp/)に吸収することに決まりました。

こちらのNPO法人は業種・地域・組織を超えた連携によって新しい事業やシステムを創出する「プロデュース」を行っていく組織です。(なんだかちょっとわからんという方は上記ホームページをご覧ください。)ゆえに、立場を超えた協働によって新しいシステムのデザインの創出を期する医療システムデザイン勉強会と思想的根幹において軌を一にしておりますことから、合併整理が可能と判断いたしました。

今後は、NPO法人ZESDAが主催する各種ワークショップシリーズ内の、医療系分科会として位置づけまして、当会の活動を継続してまいります。

以上、当勉強会のコミュニティに長らく所属されているような私の知己以外の方々にはいささか唐突なるご報告になりますが、なにとぞご容赦いただけますようお願い申し上げます。

また、これにより、みなさまに、医療従事者以外との交流機会も豊富にご提供できることにもなろうかと存じます。

そして、これまでも随所で協働して参りました「健康イノベーション連盟(仮名)(池田裕樹氏主宰)」や「未来医療研究会(稲葉俊郎医師主宰)」等関連団体とのコラボレーション企画も引き続き実施して参ります。

各位におかれましては、何卒ご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

桜庭大輔



2015年4月26日都内会議室にて、医療経団連設立準備員会主催の
北原茂実医師の講演会をNPO法人ZESDAと共に後援いたしました。

テーマは「医療経団連構想」と「輸出産業としての医療」でした。

参加者は約60名、8割が医療に関連する企業や医療従事者でした。

まず、北原医師より、日本が抱える団塊世代後期高齢者となる「2030年問題」の背景と現状、特に人口構成や現行法規に関する説明がなされました。

そして、「このまま何も変えないことには大きなリスクが存在する」と述べ、その解決策として、医療を産業として海外に輸出すること、そのために必要となる「医療経団連」についてお話がありました。

さらに、医療を基軸とした「地方創生」の方法についても、踏み込んだお話がありました。

最後は約40分間にわたり参加者との質疑応答が行われました。


2013年7月21日都内会議室にて第30回勉強会を開催しました。医師、看護師、公務員(国・地方)、メディア、コンサルタントシステムエンジニアビジネスパーソン医学生等約25名の参加がありました。

今回は、国立成育医療研究センター研究員の、美留町潤一先生をお招きし、今後の日本の幹細胞研究や臨床応用に関する方向性や課題などについてご講演いただきました。

まず、美留町先生より、iPS細胞やES細胞等の臨床応用研究を進めていく上で、どのようなルール作りが検討されているかについて、現在の政府内の議論の方向性についてご紹介がありました。

その上で、iPS細胞、ES細胞等の技術にどのような可能性が期待されているか、またどのような限界やリスクがあるか、についてもご説明がありました。

休憩後は、具体的にビジネスにするために克服するべき問題点をはじめ、調整を進めている厚労省経済産業省の問題意識の同行等、多岐にわたる論点について、会場全体で活発な質疑応答や情報共有、ディスカッションが行われました。




<参考>

一生太らない体のつくり方 (経営者新書)

一生太らない体のつくり方 (経営者新書)


2013年6月15日都内会議室にて第29回勉強会を開催しました。医師、看護師、公務員(国・地方)、メディア、コンサルタントシステムエンジニアビジネスパーソン医学生等約25名の参加がありました。

今回は、イーク丸の内院長仲 眞美子医師をお招きし、「予防医療」についてご講演いただきました。

まず、仲先生より、日本人特有の「節約遺伝子」の存在を意識しながら「糖質をコントロールする」食事の必要性や、男女の脂肪のつき方の違いをはじめ、自分の体のことを知り、自分の身体に合った方法でダイエットすることの大切さや具体的な方法について、科学的な根拠に基づいたご講演がありました。

その上で、医療費の抑制のためにも、健康診断のデータを一括管理し、受験者本人がそれぞれにふさわしい助言を医師から得ながら、主体的に健康管理していく医療システムデザイン構想についても触れました。

休憩後は、具体的にビジネスにするために克服するべき問題点をはじめとした多岐にわたる論点について、会場全体で活発な質疑応答やディスカッションが行われました。

そのなかで、仲先生の標榜するような予防型医療社会を実現するためには、多様な職種の方々が垣根を越えて一堂に会したネットワーク型の協働が必要という点で一致しました。




2013年3月17日都内会議室にて第28回勉強会を開催しました。医師、介護士、公務員(国・地方)、メディア、コンサルタントシステムエンジニア、研究者、ビジネスパーソン、弁護士、学生等約25名の参加がありました。

今回は、 北京天衛診療所の田中健一 顧問医師をお招きし、「中国の医療事情」についてご講演いただきました。

まず、田中健一先生より、「飲み会の費用負担」の話を例にとりながら、リバタリアニズム、コミュ二タリアニズム、リベラリズム等の各思想の基本的な考え方について説明がありました。

その後、参加者はそれぞれの考え方に最も近い思想ごとに分かれてグループごとに着席し直しました。

その上で、田中先生は中国・日本・アメリカ・イギリス・ドイツ等各国が、それぞれどの思想に基づいて医療制度を構築しているのかについて、比較しながら解説されました。


休憩後は、田中先生から中国の医療制度・事情についての説明があり、これを受けて、会場全体で多岐にわたる論点について活発な質疑応答やディスカッションを行いました。

自分がどのような考えで日本の医療制度を受け入れているのか、またゼロから医療制度を再構築するとしたら、自分はどのような医療制度を求めるのか、などについて考え直すきっかけを得ることができたように思います。



<参考>

財団法人 海外法人医療基金 海外医療情報ニュースレター
「北京の街角から〜中国医療現場からの報告〜第10章「中国のエリート医師の巻」」
http://www.jomf.or.jp/include/disp_text.php?type=n100&file=2008110104